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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第13章 慣れるが為にこの町を歩き出す




色の少ない庭を歩くと、池にいる鯉には赤や白と色がついていた



「今日は何をして過ごすんだい?」

結莉乃
「町に行ってみようと思います」


「そうか。…では、案内役でもつけようか」

結莉乃
「大丈夫ですよ。のんびり歩いて回ってみます」


「分かった。…気を付けて」


薫の言葉に結莉乃は頷いた。
本当は、ただ少し一人になって歩きたかったのだ。玲瓏に来てから虎蒔のお陰で緊張は解けたとはいえ肩には力が入る。その事もあり常に装っている感覚で自分で自分が気持ち悪かった。町を回らなくても良い…とにかく一人になりたかった。

それから部屋に戻り二人で朝餉を摂り終え、昼の刻に結莉乃は町へとやって来た。打刀をどこに差せば良いのか分からなかった結莉乃は短刀だけを懐に忍ばせてきた


結莉乃
(町に色がない分…凄く目立って、綺麗かも…)


片隅に置かれた長椅子に結莉乃は腰を掛け町を眺めていた。建物に色が無い分、町の人達が纏う漢服の色が咲き、ひらめいている様は素直に綺麗だと思った



(…結莉乃だ)


予定が思っていたよりも早く終わった為、屋敷に戻ろうとしていた薫は長椅子に座って町を眺める結莉乃の姿を見付けた。彼女がこれから何をするのか気になり、内緒で様子を窺う事にした

薫が見ているなんて知らない結莉乃は、暫くその場に居たが…せっかくだからと町を歩いてみる事にした。漢服は着物に比べると脚の可動域が広くて動きやすいと結莉乃は歩いていて思った


結莉乃
「わっ…」


店先の物を見て歩いていると突然、目の前から小さな誰かがぶつかって来たため…それが子供だと咄嗟に判断した結莉乃は反射で手を掴んでいた


結莉乃
「大丈夫?」

「ごめ、なさっ……う、っ…助けて…」

結莉乃
「…え?」


少女の視線に合わせるように結莉乃はしゃがんで見詰める。少女の表情はまるで何かから逃げて来た様に怯えており、結莉乃へ縋る様な視線を向ける


結莉乃
「どうしたの?」

少女
「わたしっ─…」

「こんな所に居たのか。駄目じゃないか、一人で行ったら」


少女の言葉を遮った柔らかな男性の声に結莉乃は顔を上げる



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