第13章 慣れるが為にこの町を歩き出す
翌朝、目を覚ました結莉乃は何度か瞬きをして小さく息を吐き出す
結莉乃
(…朝餉、作らなくて良いんだ…)
調理する為に起きる時間を身体が覚え、その時間に目が覚めてしまったがその行為が必要で無い事を天井を見て結莉乃は理解する
寝台から起きると結莉乃は襖を開ける
結莉乃
「…寒い」
この頃、朝晩は冷える様になり本格的に秋が訪れたのを肌で感じる。まだ白んできたばかりの空を見上げながら結莉乃は自身の身体を抱き締め腕を摩る
薫
「早い目覚めだね」
結莉乃
「…っ、薫さん。…おはようございます」
薫
「おはよう」
結莉乃
「薫さん起きるの早いんですね」
薫
「冬が近付くと身体が重くなってくるからね、早めに起きて散歩をしているんだ」
結莉乃
「成程…」
あまり蛇っぽさというのが無いため忘れていたが、彼は蛇だった…と結莉乃は思った。環境に応じて体温が下がる蛇が冬眠する様に彼もそれに影響されて身体が重いんだと呑気に結莉乃は分析していた
薫
「寒くないかい?その格好」
結莉乃
「少し。…でも大丈夫です」
結莉乃の姿に薫は自分が羽織っていた物を脱ぎ優しく彼女の肩に掛けてやる。結莉乃はそれに驚いて慌てて脱ごうとする
結莉乃
「駄目ですよ。薫さんの方が寒さに弱い筈です…着ていてください」
薫
「ははっ…構わないよ。君に風邪を引かれたら困るからね。良ければ庭を少し歩かないかい?」
結莉乃
「はい」
少し悩んだものの結莉乃は薫の誘いに乗る事にした。靴をはき小さな石段から降りようとすると、すっと白い手が差し出された。結莉乃は躊躇いがちに、その手に自分の手を重ねる
結莉乃
「薫さんの手、凄く冷たいですね」
薫
「ふふ…そうだろう?君が温めてくれても良いのだよ」
結莉乃
「……っ…」
そう言うと薫は、するっと手を滑らせ簡単に結莉乃と指を絡ませて繋いでしまう。突然の事で結莉乃は驚いたものの振り払う事はしなかった
これも受け入れなければいけない現実として…握り返しはしないものの、そのままでいる事にした