第3章 始まった非日常
集中しようと決めてからは、味噌汁だけに意識を注いだ為に何とか完成はした。眞秀にこれで良いか確認しようと小皿に味噌汁を注ぎ、魚を焼いている眞秀へ声を掛ける
結莉乃
「眞秀くん、味見してもらっても良い?」
眞秀
「ん」
短く返事をした眞秀が差し出した手に小皿を乗せる。渡した小皿が眞秀の形の良い唇に近付き口にするのを結莉乃は見ながらも、口に合うか心配で心臓が少し痛かった
眞秀
「ん…これ、俺が作ったより美味い」
結莉乃
「え、本当!?」
眞秀
「嗚呼」
目尻を下げて笑む眞秀にまた息苦しくなる。ただ、味噌汁の味を褒められたのは嬉しくて自然と頬の力は緩まった。
味見をしてもらった為、彼の手伝いをして朝食が完成した。お膳に並べている最中に眞秀が結莉乃へ視線を向けた
眞秀
「結莉乃」
結莉乃
「ん?」
眞秀
「飯食って少し休憩したら、町に出ねぇか?」
結莉乃
「え、町?」
眞秀
「嗚呼。此処の事、知らねぇだろ?これからの事もあるし案内した方が良いと思ってな」
確かに、ゲーム内では場所が移っても特に背景がころころ変わるわけではなかったし、文字説明だけなため詳しい事は知らなかった。何より自分の目で好きなゲームの風景を見てみたいと思った。
結莉乃
「うん…案内してもらえると助かる。だから、お願いしても良い?」
眞秀
「嗚呼、勿論。…また呼びに行く」
結莉乃
「ありがとう」
推しが生きている世界を推しと歩ける…そう考えたら楽しみと緊張で身体がそわそわするのを結莉乃は感じたが、それを誤魔化すように眞秀へ笑みを向けた。
それから、お膳に全て並べ終えると女中数名が台所に入って来てお膳を持って出ていく。
眞秀
「俺等も行くか」
彼の言葉に結莉乃は頷きついて行くと広間へ到着した。だがそこで結莉乃は違和感に首を傾げる