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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第12章 訪れた難に身を委ね




視界に入った姿に結莉乃は目を丸くする


結莉乃
「虎蒔さん!?」

虎蒔
「え…何で君、僕の名前知ってるの?」

結莉乃
「あ…あー…えっと…虎蒔さんだよ!って天から声が聞こえて…」

虎蒔
「へぇ、天から声が!…って、そんなわけないでしょ。まぁ…何で知っていたかは掘り下げるのは止しておくよ。僕は山名 虎蒔 (ヤマナ トラジ)、宜しくね」


思わず出てしまった名前の言い訳は非常に変で苦しいものだったが、虎蒔と呼ばれた男は穏やかな笑みを浮かべて告げられた言葉に結莉乃は安堵の息を零す


結莉乃
(本物の虎蒔さんだ…)


白みが強い灰色の髪は長くはなく、真ん中で分けられた前髪から覗く切れ長に縁取られた中で輝く紫色の瞳は結莉乃が画面越しに見ていた姿だった。

玲瓏領はストーリーでも名前しか出ていなかった印象と単純にすっぽり抜け落ちていたのも事実で皆に説明をしてもらったが、虎蒔は一度出てきたのを結莉乃は覚えていた


結莉乃
(自分の事おじさんって言うし、緩いのに格好良いんだよね…ギャップがあって覚えてた…)


そういう理由から虎蒔の事は覚えていたのだった。そんな事を考えていると虎蒔は結莉乃の前に座って申し訳なさそうに眉を下げる


虎蒔
「僕達の主がごめんね。…玲瓏の事は知っていると思うが…欲しい物は必ず手に入れるってやつ。全員が全員そうじゃないからね。おじさんは怖い人じゃないし緊張しながら過ごさないで」


優しく掛けられる言葉に結莉乃は何故か泣きそうになってしまった。自分でも気が付かないうちに気を張ってしまっていたらしく、虎蒔の包容力のある空気に結莉乃の身体から力が抜けた


虎蒔
「怖かったよね。…でも、薫さんの命令に逆らう事は出来ないんだ…ごめんね」


申し訳なく告げる虎蒔は遠慮気味に結莉乃へ手を伸ばし、そっと頭に乗せた。虎蒔の手は大きくて凄く優しかった


結莉乃
「…ありがとうございます」

虎蒔
「いえいえ。…はい、これ。一切れで申し訳ないけど」

結莉乃
「羊羹…」


羊羹を虎蒔から受け取ると結莉乃は胤晴と羊羹を食べた事を思い出して、鬼城に帰りたいと…心から思った



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