第12章 訪れた難に身を委ね
一方その頃、結莉乃は宛てがわれた部屋にいた。部屋の外では薫の部下が二人待機しているので結莉乃は大人しくするしか無かった
結莉乃
(玲瓏の町並みが少し冷たく感じるのなんでだろ…)
玲瓏に入って町を見た時に少しだけ冷たい印象を結莉乃は持った。杠の時は心が踊る程に綺麗で感動したのに…そこまで考えて結莉乃は理解する
結莉乃
(色があんまりないんだ)
色物が少なく、黒や灰色が多く…それが武具で町が装備している様にも感じた。だが、人の着物には色があり不思議な感じがした。
こういう事を考えていないと自分が何も出来なかった事を思い出し、気分が落ち込んでしまうため他に気を散らしていた
結莉乃
(此処から逃げられるなんて思ってないから見張り付ける必要ないのにな…)
鬼城では自由にさせてもらっていたし色んな事を任されていたため常に走り回っていた。だから、余計に閉じ込められている様な感覚になり時間がある分、散らしても散らしても暗い考えが浮かび上がってくる
結莉乃
(そういえば…気が付いたら向こうの世界の事を考えたり帰りたいって思う事も無くなってる…)
思えば結構、早い段階から現実世界に帰りたいというのが無くなってたように結莉乃は感じる。恐らく現実世界よりもこっちでの生活の方が充実していて、人も豊かで楽しいからだろうと改めて思った
「ちょっとごめんね。…ここ通してもらえる?」
そんな事を考えていると襖の向こうから柔らかい穏やかな声が聞こえてきた。結莉乃はその声に耳を澄ませる
「分かりました」
「それと、一回外してくれると有難いかな」
「それは出来ません。主様に見張りを命じられておりますので」
「大丈夫だよ。僕も居るし…第一こんな場所で逃げられるなんて彼女も恐らく思っていないよ。ね?」
「…分かりました」
見張りをしていた人の声が渋々、了承すると二人分の足音が去っていく音が聞こえた。そして、足音が聞こえなくなると襖が開いた