第12章 訪れた難に身を委ね
天音は胤晴の前に正座をし額が畳に触れる程、頭を下げる
天音
「すンませン。…大勢に囲まれて…その中に蛇野郎が居たっス。蛇野郎は結莉乃を嫁にする為に来たって言ってま…した。嫁にならなければ大将や此処に居る全員を傷付けるって。オレが居たのに…守れませンっした。その上…ぼろぼろになっちまって。それを見て、アイツは向こうに…」
思い出して自分の不甲斐なさに天音は自身の太腿に何度も拳を打ち込む。それを見た眞秀が横から付け足す
眞秀
「向こうに行く前に天音の傷を治させてくれって頼んで、治して行ったみたいです」
その言葉に胤晴は天音へ視線を向ける。血塗れで破れた着物を見る限り天音が相当ぼろぼろにされたのが分かる。胤晴も天音が強いと理解している為、余程の数であったのとより強い何かがあったのかと予想する
胤晴
「まずは天音。良く戻ってきた」
天音
「……っス」
眞秀
「すぐに動きますか?」
胤晴
「いや、すぐには動かない。様子を見て時が来たら迎えに行く」
慎太
「分かりました」
この事は全員に伝えられた。今回は杠の時とは違う。杠は彼女に直接、助けを求め結莉乃自身が助けると決め…穏便に物事が収まった。今回は結莉乃の力だけでなく、彼女自身を狙ったもので…玲瓏という必ず手に入れるを実現させる領の領主に目を付けられ攫われたのだから穏便には済まない
胤晴は壬生の領主として冷静でいなくてはならない立場であるが、ぐっと握り締められている拳が彼の感情を表していた
自身の部屋に戻った天音は、どかっと座布団に腰掛け後頭部を掻き毟る
天音
「クソッ…」
出る声は結莉乃を守れなかった事を悔やむもの。首にかかっている彼女から貰った首飾りの緋色石を摘み天音は息を吐き出す
天音
「ぜってェ…助け出してやっからな…」
強い瞳は既に悔やむ事をやめ次の事を考えていた。結莉乃を助けに行く時は自分が一番の働きをしようと天音は決めるのだった