第12章 訪れた難に身を委ね

玲瓏の住民
｢しぶてぇ野郎だ…！｣

天音
｢ッたりめェだろ、てめェ等みてェに良い加減な気持ちで戦ってねーンだよ！｣

玲瓏の住民
｢ぁが…！｣

玲瓏の住民
｢うっ…！｣

天音
｢だァ！クソッ…キリがねェ！｣

薫
｢粘るねぇ…｣


肩を上下に揺らして呼吸をする天音の横で振り上げられた刀。だが、天音は反応が遅れたが…その刀は天音に傷を付けられなかった


天音
｢結莉乃…｣


天音を傷付ける筈だった刀を退けたのは、鞘に入ったままの刀を振り下ろした結莉乃だった。だが恐らく彼女に出来るのはここまでなのだろう

体勢を立て直した天音は再び襲い来る男達に刀を振るう


天音
｢ぐ、っ…｣

結莉乃
｢天音くん…！｣

天音
｢大…丈夫だ…｣


徐々に天音が押されるのが分かる。それでも動けない自分が嫌で結莉乃は下唇を噛む


天音
｢ぐぁ…っ｣


動きが鈍くなってきた天音の腹部を一本の刀が貫き、流石にその激痛に天音は膝をつく。数多の切り傷に打撲と体力消耗により傷の回復は普段よりも圧倒的に遅い


結莉乃
｢天音くん！もうやめて…！死んじゃうよ！｣

天音
｢るせェ…これくらい…っ、平気だ…アンタを、蛇野郎に…連れて行かせねェ…絶対に、っ｣


血と汗で濡れた顔に穴が開き鈍色の着物が紅に染まる程の傷を負っているにも関わらず天音は結莉乃の守る為に刀を握る。自分の為にここまでしてくれているのに何も出来ない事に結莉乃は腹が立った

結莉乃は刀で身体を支えている天音の前に鞘から抜いた刀を手に出て刀を構える。だが、圧倒的な強さの差と異形では無い事から結莉乃の手は震える


天音
｢何、してんだ…アンタが敵うわけ…｣

結莉乃
｢だとしても！私はいつも皆に助けられてばかりだから…少しでも役に立ちたい！｣


そうは言っても天音がぼろぼろになるまで何も出来ずにいた。それなのに役に立ちたいなんてどの口が言っているんだと結莉乃は思ったが、今は考えるのをやめた。結莉乃が出てきた事から奥に居た薫が前に出てくる


薫
｢手が震えてるじゃないか｣

結莉乃
｢こんなにするなんて酷いです！｣


手を震わせながら声を発する結莉乃を薫は目を細めて見詰める