第12章 訪れた難に身を委ね
異形以外に刃を向けなきゃいけない瞬間が結莉乃に今訪れていた。だが、やはり怖くて腰に差した刀の柄を握る事しか出来ない
それを横目で確認した天音は結莉乃へ顔を向けずに口を開く
天音
「アンタの身を守る為の刀だろ。戦おうと思うな、鞘から出さねェで良いから自分を守れ。オレがアンタの代わりに戦ってやるからよォ」
結莉乃
「天音くん…」
強く背中を押される言葉に結莉乃は一度、瞼を閉じ息を吐き出し…腰から鞘ごと刀を引き抜く。
薫
「彼女は傷付けるんじゃないよ」
そう指示を出すと薫は後ろへと下がる。天音は鞘から刀を引き抜き構える
天音
「全員ぶっ殺してやらァ」
殺しては駄目、そんな事を言っている場合で無い事を結莉乃は分かっているため天音の言葉には目を瞑った。じりっという草履が石を踏んだ音を合図に天音と男達が一斉に動き出す
天音
「オルァ!」
玲瓏の住民
「ぐぁ…っ」
玲瓏の住民
「く、っ…」
振り下ろされた幾つもの刀を簡単に避けた天音が、凄い速さで上から下からと振ると数人が声をあげて倒れる。天音は体勢を低くし刀を左右へと振りながらまた数人を倒す
天音の圧倒的な強さに尻込みをする者もいるが、大半が挑む様に突っ込んでいく。結莉乃が何もせずに済む程、天音は矢継ぎ早に攻撃を仕掛けていく
結莉乃
(今の私凄く足で纏いになってる…ゲームでたまに突っ込むそれになっちゃってる!…のは分かってるけど)
動けば良いのに、動いて欲しいそう思えるのは自分がただゲームてして進めていて実際にその場に居ないから思える感想だったと…同じ様な状況に陥って結莉乃は理解する
その間にも天音は地を蹴り囲んでいた男達が地面かと錯覚する程に彼等の身体を走り抜ける
天音
「クソッ…人数が多過ぎる…!」
いくら天音が戦闘能力に長けているとはいえ常に囲まれている事から意識を散り散りにしなくてはならず集中力が必要で、それが余計に天音から体力を奪っていく
次第に天音の頬には粒の汗が伝うようになり肩で息をする程になる。そして徐々に天音の着物や袴が切れその下の肌に紅い線を刻む