第12章 訪れた難に身を委ね
弦
「あの頃はすまなかったな、嫌な言い方をしちまって」
結莉乃
「いえ、大事に作っている物を良い加減な気持ちで扱って欲しくないですし…ああ言われるのは当然です」
弦
「ありがとな。…じゃ次の刀があっから。また何かあったら来い。天音もな」
天音
「おう」
結莉乃
「お世話になりました!」
二人で石造りの門を出ると結莉乃は大事そうに腰に打刀を差すと、最初の頃は違和感があった感覚も今では慣れて無くてはならない物になっていた
歩き出して数歩…天音の纏う空気が変わったのを結莉乃は肌で感じとる
天音
「気ィ付けろ。…囲まれてやがる」
結莉乃
「……え…っ」
結莉乃の目には先程と何も変わっていない景色が広がっている。だが、天音の言葉を聞いていたかのように幾つもの足音が結莉乃の耳にも届く
薫
「君の周りには厄介な奴ばかり居るね」
結莉乃
「厄介って…」
二人の視界には裏柳色がかった白い髪を風に揺らされている薫の姿が入った。その後ろには数十人もの鳥類と爬虫類の男性が刀を肩に乗せて笑みを覗かせていた
薫
「成程…。壬生に治癒能力を持った人間が鬼城に居るとは聞いていたが…まさか君だったとはね」
薫は結莉乃が治癒能力を持っている事は知らなかったが、鬼城に暮らしている眞秀、八一、天音が結莉乃と居た事から彼女が治癒能力を持っているという答えに至ったようだった
薫
「僕が惚れた女性が治癒能力を持っていた…これは必然だったのかもしれないね。前回は諦めたが…今日は君を玲瓏に連れ帰って嫁にすると決めているんだ。…諦めるつもりは無いよ」
天音
「ペラペラと良く動く口だなァ、蛇野郎」
驚いて固まっている結莉乃を庇うように前に天音が好戦的な笑みを浮かべて出る
薫
「鬼城に暮らす皆強いけど…君はより強いから厄介なんだ」
薫が不敵な笑みを浮かべて右手をあげ、すっと軽く動かすと…それを合図に薫の前へ数十人がぞろぞろと歩み出てくる