第12章 訪れた難に身を委ね
石造りの門を潜り鍛冶屋の中に二人は入る
結莉乃
「こんにちはー」
結莉乃があげた声に反応した六十代後半の男性が顔を覗かせる
弦
「おう、来たか」
結莉乃
「はい。預けていた打刀を受け取りに来ました」
首に掛けた手拭いで顔を拭いた鍛冶師の弦が結莉乃の白い鞘に収まった打刀を持って出てくる
弦
「ほらよ。…お、何だ今日は天音もいるのか」
天音
「まァな」
置いてあったやかんに直接、口を付けて水を飲み腕で拭うと弦は結莉乃へ視線を向けた
弦
「最初、眞秀が女に刀をやるって聞いた時は巫山戯てんのかって思ったけどよ」
突然、振られた話に二人は耳を傾ける。
眞秀に刀を貰ってから少しして此処に連れて来てもらったのを彼の言葉で結莉乃は思い出す
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弦
「こんな細っこい腕で刀を握るってか?俺を馬鹿にしてんのか」
眞秀
「馬鹿にしてねぇから弦さんに頼んだんだろ」
弦
「あぁ゙!?何だって!?」
眞秀
「結莉乃は本気で刀を扱える様になろうって毎日、頑張ってんだ。戦場で使う刀は上等なもんが良いだろ」
弦
「んな言葉で俺が納得すると思ってんのか。大体こんなすぐに折れちまう様な腕に吹っ飛ばされちまいそうな薄っぺらい身体してる…しかも女に、刀が扱えるわけがねぇんだ」
眞秀
「弦さんそんな言い方─」
結莉乃
「私!弦さんの刀を持つのに相応しいって納得してもらえる様に頑張ります!だから、少しだけ時間を下さい!」
───── ╴╴
弦
「有言実行ったぁ、あんたの事を言うんだろうな」
結莉乃
「弦さんの刀を持つのに相応しいって…思ってくれてるんですか?」
弦
「ははっ!今更、何言ってんだ。掌のたこを見れば分かる。…何より此処に刀を出しに来てんのが何よりの証拠だろ」
笑って答えてくれる弦に結莉乃の不安な気持ちは和らいでいく