第12章 訪れた難に身を委ね
そして、びりびりっと雑に袋を破ると中に入っていた首飾りを取り出し自身の首につける
まさかすぐにつけてくれると思っていなかった結莉乃は言葉も無く驚き、天音を見詰める
天音
「ンだよ。…せっかく貰ったのにつけなきゃ意味ねェだろ」
軽く顔を逸らし首筋を掻きながら天音は少し不貞腐れた様に告げた。結莉乃はその事が嬉しくてすぐに笑みを浮かべる
結莉乃
「ありがとう!それ、やっぱり天音くんに凄い合ってる」
天音
「そーかよ」
ぶっきらぼうに伝えられる言葉にも照れが見えて結莉乃は小さく肩を揺らして笑いつつも元々、開いていた首元から覗く天音の鎖骨の間に光る緋色の石を見て嬉しくなった
結莉乃が刀を預けた鍛冶屋は町の中にある鍛冶屋では無く、胤晴達が贔屓にしている少し堅物で腕の良いおじさんの鍛冶屋だ。その鍛冶屋は少しだけ町から離れている
天音
「馬には慣れたか?」
結莉乃
「うん。凪さんの教え方分かりやすいし雪が頼もしい!」
天音
「そうか。馬には慣れておいた方が良い。何かありゃその辺に居る馬も借りれるしなァ」
結莉乃
「でも、それって皆みたいに馬の扱いに長けてる人しか出来ないんじゃない?」
天音
「ンな事ねェよ。…動物は分かンだ。そいつが動物を好きかどうか、困ってっかそうじゃねェか」
結莉乃
「成程…」
天音
「アンタは動物好きだし、動物に好かれるだろ」
動物が大好きな結莉乃にとって天音の言葉は嬉しいものだった。人間には分からないが他の動物に嫌われた事は無い気がしていたため思い込みじゃないかもしれない、そう思えるだけで充分であった
人通りも少なく店も多くない場所に響く鉄を叩く音。この音に此処へ来て刀を渡されたばかりの頃の結莉乃は馴染み無かったが、今では活気があるように感じる