第12章 訪れた難に身を委ね
結莉乃
「あ、いた!」
天音
「あ?」
縁側に腰掛け白い大福を頬張る天音の姿を見付ける。天音は結莉乃の声に反応し彼女へ顔を向ける
天音
「どうかしたンか」
結莉乃
「鍛冶屋に預けておいた打刀を取りに行きたいんだけど…天音くんついてきてくれないかな?」
申し訳なさそうに告げられたそれに天音は数度、瞬きをしてから残りの大福を一気に口に頬張り立ち上がる
天音
「ふぉっふぉふぁっふぇふぉ」
結莉乃
「…う、うん」
頬が膨らむ程に口に詰めた為、何を喋っているか分からなかったものの結莉乃が頷くと天音は彼女へ背を向け去って行く
結莉乃
(ちょっと待ってろ、って言ったんだよね…多分)
ゆっくり食べてくれても良かったのに、なんて思いながらもすぐに行こうとしてくれる天音の優しさと頬が膨れハムスターの様な姿の天音を見て結莉乃は思わず笑みを零した
鈍色の着物に黒色の袴と身に纏っている物は変わらないが腰に刀を差して戻って来た天音と共に屋敷を出る
結莉乃
「あ、これ」
装飾具の店の前を通ると結莉乃は思わず脚を止めた。隣を歩いていた天音も脚を止め首を傾げた。
結莉乃は店先に飾られていた黒い紐で出来た首飾りは真ん中に小さく丸い緋色の石がついており、結莉乃はそれを手に取り掲げてから天音の顔の横へ持っていく
天音
「ンだよ」
結莉乃
「この石、天音くんの瞳と同じ色」
天音
「ハ…?」
結莉乃
「ついてきてくれたお礼になるかは分からないけど…」
天音
「ンなの気にすンなよ」
結莉乃
「いつも稽古付けて貰ってお世話になってるし…私の気分って事で受け取ってもらえないかな?」
天音
「…好きにしろ」
少し照れ臭そうに顔を背ける天音の返事に結莉乃は笑みを浮かべて、支払いに行く。戻って来た結莉乃に紙袋を渡された天音は受け取った紙袋を、じっと眺める