第11章 難はいつもすぐ傍で寄り添う
眞秀が今にも鞘から刀を引き抜こうと僅かに動いた瞬間、薫の表情が柔らかくなる
薫
「今日は分が悪い」
そう呟くと薫は羽織を翻し三人に背中を向けて去り始める
眞秀
「おい…!」
眞秀が追おうとしたが人混みに紛れてしまい、既にその背中は見えなくなってしまっていた
八一
「大丈夫だった?」
結莉乃
「うん…二人が来てくれたお陰で」
八一
「そうか、良かった」
眞秀
「大将に伝える必要があるな」
八一
「そうだね。…彼とはどこかで会ったの?今回が初めて?」
結莉乃
「え?…えっと、前にガラの悪い人達に追われた時に助けてもらったの」
八一
「成程。それで目をつけられたんだ」
結莉乃はその言葉に目を丸くする。特に目をつけられる様な事はしていない、むしろ迷惑をかけてしまった…と結莉乃は分からなかった
眞秀
「何か言われなかったか?」
結莉乃
「一目惚れしたって…言われた」
眞秀
「不味いな」
結莉乃の言葉に二人の表情が険しくなる
眞秀
「あいつは玲瓏の領主だ。…で、目をつけたら必ず手に入れなきゃ気が済まねぇ奴なんだ」
結莉乃
「え…っ」
八一
「暫くは一人で行動しない方が良い」
結莉乃は二人の空気にただ頷くしか無かった。それからは三人で屋敷に向かって歩き出した
結莉乃
(新作…)
甘味処を通り掛かると新作告知が出ていて結莉乃の視線はそこで止まるが、そんな事を言っている場合では無いと思い二人の背中を慌てて追った
屋敷に戻ると全員が胤晴の部屋に呼び出された
胤晴
「それで報告とは」
眞秀
「結莉乃が玲瓏領主に目をつけられました」
胤晴
「何…?」
玲瓏はストーリーに出てきた筈ではあるのだが、すっぽりと抜け落ちたように分からなくて結莉乃はおずおずと手を挙げる