第11章 難はいつもすぐ傍で寄り添う
胤晴
「…すまなかった」
結莉乃
「え?大丈夫ですよ!」
胤晴は結莉乃を見て申し訳なさそうに謝罪を述べる。そんな姿を見て結莉乃は慌てて首を横に振る
驚きはしたが落ち込む胤晴の表情が新鮮で結莉乃は笑みを浮かべていた
昼になると結莉乃は購入した花瓶に飾る花を買う為に町に来ていた。色とりどりに並ぶ花はどれも可愛くて結莉乃は悩んでしまう
「君は花が好きなのかい?」
結莉乃
「え?……あ、薫さん」
少し上から声が聞こえて結莉乃が顔を上げるとそこには切れ長の目を細めた薫が立っていた
結莉乃
「花…好きですよ。ところで薫さんもお花を買いに?」
薫
「いや、僕は君を探していた」
結莉乃
「え、私ですか?」
薫
「嗚呼。…あの日、僕は君に一目惚れをしてしまってね。だから、結莉乃さんを僕の領に連れて行こうと思って」
何を言われているのか、どういう事なのか理解出来なくて結莉乃はきょとんとしてしまう。でも、此処でついて行ってしまったら駄目な気がするが、逃げられるとも思っていない結莉乃の頭は混乱する
結莉乃
「選択肢!選択肢欲しい…!ゲーム中でもこんな事なかったけど!」
薫
「選択肢?そんなの君が僕に攫われる事しかないよ」
結莉乃
「そういう事じゃ…!わぁ、ここで選んだらBADENDとかないよね!?死にたくない!」
ゲームの住民の前でゲームやBADEND等と言葉に出してしまうくらいには結莉乃は焦ってしまう。楽しげに目を細める薫が近付くのと同時に頼もしい声が結莉乃の耳に届いた
眞秀
「死なねぇよ、俺がそんな事させねぇからな」
八一
「そうそう。彼女の事は諦めてもらいましょうか?」
薫
「ちっ…厄介なのが来たね」
八一に腕を引かれ、結莉乃の前には眞秀の頼もしい背中があった。その光景が彼女を一気に落ち着かせる。二人の登場に薫の穏やかだった表情が険しくなり結莉乃は背筋がぞくっとするのを感じる