第11章 難はいつもすぐ傍で寄り添う
胤晴
「どうした」
結莉乃
「あの…玲瓏ってどんな領なんですか?」
胤晴
「玲瓏は爬虫類と鳥類が集まる領だ。その領主が君が会った男、蓮巳 薫(ハスミ カオル)。奴が欲しい物は手に入れる性格故に民もそれに則った行いをしていて、強引な奴が多い」
玲瓏領は相当、強引な様で皆の表情が怖いと結莉乃は感じた。壬生が一番、力を持っているとはいえやはり警戒しているんだと思ったのだった
天音
「あの蛇野郎…」
天音が小さく呟いた言葉に結莉乃は軽く首を傾げる。それを見逃さなかった凪が補足する
凪
「玲瓏領主が蛇なんです」
結莉乃
「成程…」
胤晴
「…外に出る時は必ず誰かを供につけろ。一人で出るな」
結莉乃
「分かりました」
眞秀にも注意された通りの事を告げられれば結莉乃は申し訳なく感じつつも頷いた。
何だか大変な事になってしまった…と結莉乃は思いながら自室へと戻った
─翌朝…
結莉乃は朝餉を終えると厩舎へとやって来ていた
結莉乃
「雪、おはよう。今日も良い天気だね」
頬を優しく撫でると雪は小さく首を振り返事をしているようだった。杠の時はいきなり連れて行かれたから皆がどうだったかは分からないが、少なくとも玲瓏の名を出した時の様な空気にはなっていないだろう事は予想出来た
そう予想するだけで彼等の行いが褒められたものばかりでは無いのは理解出来る。が、何故自分なのか…その辺は結莉乃も理解が出来なかった
結莉乃
(もしかして治癒できるのを知ってて…?)
だから、連れて行きたいのだろうか。その為に一目惚れだという理由を付けて…いや、連れて行きたいのなら一目惚れではなく治して欲しい人が居ると言えば良い筈、と結莉乃は自身の思い付いたそれを否定した
結莉乃の不安を感じ取ったのか雪が彼女の掌に優しく鼻を押し付ける
結莉乃
「ふふ…心配してくれるの?ありがとう、雪」
優しく顔を抱き締めるようにして雪に感謝を告げる
結莉乃
(不安になっても仕方ない…!)
結莉乃は無理矢理、自分に喝を入れ厩舎を後にした