第11章 難はいつもすぐ傍で寄り添う
結莉乃
「すみませんっ…人に追われてて逃げていたらぶつかってしまって…!」
「…彼等は君の知り合いかい?」
細く長い指を結莉乃の背後に向ける男性の言葉に思い切り首を横に振る
「成程。…僕の後ろに」
結莉乃
「…え…っ」
流れる様な動きで結莉乃は手首を掴まれ男性の後ろに隠されていた。追い付いた男達が膝までの裏柳色がかった白い髪の男性に向かって声を荒らげる
男3
「あんたの後ろにいる女を渡してもらおうか」
「ほう…それは何故?」
男4
「あぁ!?んなの決まってんだろ。…俺等が先に見付けたからだよ」
ひひひ、と口を歪めて笑う男を木賊色の瞳の男性は汚い物を見る様に切れ長の目を細めた
「君達の様な汚い人間が自分の領に居たら鬼王も気分が悪いだろうね」
男5
「ふんっ、んなの気付くわけねぇだろ」
「まぁ、僕はどうでも良いんだけど…彼女が困っているみたいだから君達を排除しなきゃね」
結莉乃
「排除…?」
彼の背中に隠れながらも不穏な言葉に結莉乃は思わず小さく零す。だが、彼は顔だけを軽く結莉乃へ向けて笑むだけだった
「他領で人目がある…そんな所で騒ぎを起こす気は無いよ。…さぁ、僕の言う事に従ってもらおうか」
柔らかい声なのにどこか威圧感を感じる空気に五人の顔が強ばるのが結莉乃でも分かった。何をするんだろう…と結莉乃が不安に思っていると彼が掌を自身の口の前へ出す
そして、ふっと息を掌に吹き掛けるときらきらとした鱗のようなものが溢れ五人へ流れる
男1
「…っ…何だこれ?」
男3
「何だ!?か、身体が動かねぇ…!」
五人の身体が微動だにしなくなり男達の表情に戸惑いと焦りが見える
「…この場から去れ」
男性の声が響くと五人の身体が急に動き出し、二人が居る方とは別の方向へと五人は歩き始めた
男4
「な、んだよ…これ!」
男2
「気持ちわりぃ…!」
自分の意思ではなく動く身体に声を上げながらも、段々とその声は遠くへと消えてなくなったのだった。
それに圧倒されて戸惑っている結莉乃へ再び男性が振り返る