第10章 帰ってきたと思える場所
結莉乃
「それなら乾いたら持って行きますね!」
胤晴
「ありがとう」
その後、凪に確認しろと言われていたものがあったらしく胤晴は自室へと戻って行った。
結莉乃
(せっかくスマホがあるんだし…残したい事があったら撮ろうかな。それで、後から絵にしたら…)
一人になった結莉乃は、暫く見ていなかったスマホの存在を思い出してそんな事を考えていた。簡単に思い出を残せる手段があったのに活用していなかった事に少しの後悔を結莉乃は覚えた。
思えば仕事の連絡や何かしらで常に持ち歩いていたスマホを全く持っていなかったのを思い出した。でも、今の時代では時間がかかる写真をすぐに確認出来るスマホで撮る為にまた持ち歩くのも良いかもしれないと考えた
結莉乃
(手紙と一緒で手描きって何か良いなって気付けた…)
それから今日は天音と特に予定は無かったが、結莉乃は道場に顔を出す事にした。道場に近付くと誰かがいるのか、踏み込む様な音と木刀が当たる音が聞こえてきたため結莉乃は顔を覗かせる
結莉乃
(天音くんと八一くんだ…)
結莉乃は八一が鍛錬をする印象が無かったため道場に居る事に少し驚いてしまった。だが、興味のある結莉乃は暫く覗く事にした
八一が天音に木刀を振り、それを天音が片手で持った木刀で受け止める
天音
「オラッ」
八一
「……っ」
受け止めるのと同時に八一の腹部へ脚を突き入れる。腹部の衝撃に八一は眉間に皺を寄せて後退する。荒っぽく雑に見えるが基礎が全て活かされた太刀筋で、初めて眞秀に刀を教えてもらった時の言葉を思い出す
結莉乃
(慣れたらきっと自分の持ちやすい持ち方になると思うが、それは基礎がちゃんと出来てるからの話だって言ってた…。天音くんの持ち方や型の崩しがちゃんと戦いに活かされてるのは、基礎が出来てるから)
勿論、全員がそれを出来ているが…強さを求めている彼だからこそ余計にそう感じるのだろうと結莉乃は思った。