第10章 帰ってきたと思える場所
園華
「またいつでもいらして下さい」
結莉乃
「はい、ありがとうございますっ」
凛子
「その時はもっと凛子とお話しようね!」
結莉乃
「うん、楽しみにしてる」
茉白
「貴女と友達になれて…良かった」
結莉乃
「私も!また来るね」
茉白
「ええ」
その様子を見ていた胤晴と凪は、結莉乃は何処に行っても好かれるんだなと感じていた。一通り挨拶が終わったのを確認すると胤晴が結莉乃へ声を掛ける
胤晴
「行くぞ」
結莉乃
「はい!」
見送ってくれる三人に結莉乃は手を振り、胤晴と凪と歩き始める。領と領の間にはやはり距離があるらしく、領境には馬がおり結莉乃は胤晴と乗り、凪はその後ろを馬に乗って着いて行く
壬生の領に入ると馬を降りて徒歩で鬼城へと向かう。そして、門前に到着すると結莉乃は屋敷を見上げた
結莉乃
「…不思議ですね」
胤晴/凪
「?」
結莉乃
「此処に来た時はどうしようとか大丈夫かなって思ってたんです。でも…此処を離れて別の場所に少し居ただけなのに、壬生に来て帰ってきたって思ったんです」
胤晴
「それだけ君がこの領に慣れたという事なんだろう」
結莉乃
「ふふ、そうみたいですね。何だか嬉しいです。此処に帰る場所があるって思えて」
胤晴
「当然だ。…此処は君の家なのだからな」
結莉乃
「私の…家」
凪
「さ、皆さん首を長くして待っている筈です…早く入りましょう」
結莉乃
「はい!」
素直に結莉乃は嬉しかった。
最初は受け入れられていなかった自分が此処を家だと思って良いと言われるまでになれた事が。
三人の背中は門へと吸い込まれ屋敷へと入り、胤晴に促されるままに声をあげる