第10章 帰ってきたと思える場所
胤晴
「辞めておく。…君達が此処まで築きあげてきたものを俺は壊すつもりは無い。だが、君の気遣いは受け取っておく」
園華
「そうですか。あんさんらしいですねぇ」
胤晴
「ただ、もう少し彼女が回復してから向こうに戻りたいんだ」
園華
「ええ、それは構いません。ごゆるりとしてください」
園華がお辞儀するのを見れば、結莉乃を支えていた茉白は静かに園華の部屋を出で彼女が使っていた部屋へと連れて行く
結莉乃
「ありがとう」
茉白
「当然だよ。…友達、だから」
布団に横になった結莉乃を見ながら茉白が僅か頬を赤く染め、視線を逸らして告げる言葉に結莉乃の表情が緩む
茉白
「ほら、休んで」
結莉乃
「うん…おやすみ」
結莉乃は茉白の声に従ってゆっくりと瞼を閉じ、深い睡眠に落ちていく
─二時間後…
結莉乃
「……ん…」
誰かに頭を優しく撫でられる感覚に結莉乃の意識はゆっくりと浮上していく。瞼を持ち上げると視界に園華が入った
結莉乃
「園華さん…?」
園華
「目が覚めはりましたか?」
結莉乃
「はい、身体の重さも無くなりました」
園華
「良かったです」
結莉乃はゆっくりと上体を起こすと園華が顔色を窺い、先程よりも良くなった顔色に安堵する
結莉乃
「あの…園華さん」
園華
「はい?」
結莉乃
「眠っていた人達は…?」
園華
「安心して下さい。全員目を覚まし元気です、あんさんのお陰で」
結莉乃
「良かった…」
園華
「胤晴さんが私に謝るなんて驚きました。…あんさんもあの方に怯まず話せるなんて凄いですね。彼の空気が変わったんも結莉乃さんのお陰やろか」
結莉乃
「そんな…私は特に」
自覚が無いままに他人を変えている結莉乃に園華は笑むが、次には息を吐き出す
園華
「私は…女性も働ける、女性だけでも生活が出来る…そう思い女性に優しい場所を提供したくて杠を創りました。杠で暴れた者が居れば私は容赦無く罰しました」
園華から話される杠が誕生した理由を聞き胸が苦しくなるのを感じる。女性に対して酷い態度をとる人がいるから園華は行動し、そこに助けを求めた人達が集まっているのだと感じた