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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第10章 帰ってきたと思える場所




結莉乃
「手紙に書いた通りなんです。私は自ら望んで杠領の人達を助けたいと思いました」

胤晴
「攫われたのにか」

結莉乃
「それは最初に謝って下さいました。…私に力を貸してほしいと言ってくださったんです。だから私は─」

胤晴
「倒れると分かった上でか?」

結莉乃
「はい。私が目眩を起こしても次にいこうとした時すぐに治癒の力を使うのを止めて、休むよう言って下さいました。無理をしないでと私の身を気にしてくれました。…それに、私慎太くんの傷を治した時に何で倒れたのか分からなかったんです。でも、皆さんが居たからその理由に気付けたんです…私の力が体力を削っていて症状の深刻さで消耗する量が変わる事に」

胤晴
「………」

結莉乃
「園華さん達には本当に良くしてもらったんです!…私、壬生も杠も好きです。自分の好きな領同士が私のせいで関係が拗れてしまうなんて嫌なんです」


胤晴に気持ちが伝わる様に結莉乃は言葉を掛ける。胤晴も争い責めるつもりなど無かった。だが、ぐったりと凪に抱えられている結莉乃を見たら抑えられなかったのだ


胤晴
「君らしいな、全く。……すまなかった。君達を責めた事を詫びる」


胤晴が頭を下げると凪も同じように下げる。その光景に園華は驚いて目を僅かに丸くしたが、すぐに同じ様に頭を下げる


園華
「頭を下げるんは私の方です。彼女が力を貸してくれるからと…その言葉に甘えてしまいました。申し訳ありません」


ピリついた空気が無くなれば結莉乃は安堵した様に息を吐き出す


園華
「どうです?今日はお泊まりになりますか?」

凛子/茉白
「えっ…」


杠は男性が泊まる事は許されていないのに、領主である園華から宿泊の提案が出れば此処の住民である凛子と茉白は驚く。凪と結莉乃も目を丸くしていた。

付かず離れずを保っていたのをこれを機に少し前進してみようという園華なりの近寄り方なのだろうか…どう返事をするのか全員の視線が胤晴へと向く



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