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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第10章 帰ってきたと思える場所




横抱きをしている凪の腕の中で結莉乃は規則正しい寝息をたてていた。凪の前を茉白と凛子が歩く

会話も無いままに華屋敷に到着すると、二人が園華の部屋に案内する。中に入ると既に胤晴が座っていた


胤晴
「…結莉乃」


「今は眠っております」

胤晴
「そうか」

園華
「其方の部屋に布団を用意しました。良ければ結莉乃さんを」


「ありがとうございます」


繋がっている隣の部屋へ目をやってから凪はそこにある布団に結莉乃を優しく寝かせてやる。凪が元の部屋に戻り空いている座布団に腰を下ろす


園華
「茉白、怪我をしたの?」

茉白
「はい。異形の爪が刺さりまして…ですが、結莉乃さんのお陰で治りました」


着物が血塗れなのはお許し下さい、そう茉白が付け足すと胤晴は息を吐き出す


胤晴
「随分と彼女をこき使った様だな」

園華
「そない言い方はやめてもらえます?彼女は私達に力を貸してくだはったんです」

胤晴
「治癒の力を使って彼女が倒れた事は今まで無かったが?」

園華
「うちの領の者が重症やったんです。彼女は治癒の力を体力を削って使用しているようで…それを連続で行ってしまうと倒れてしまうらしいんです」

胤晴
「で、町の者を治癒した後に共に戦わせ…君を治して倒れたと言う事か」

凛子
「ちょっと!さっきから事情─」

茉白
「すみません…私が刺されたせいです」


責めるような言葉と圧を感じる空気。凛子が口を挟むものの、何をされるか分からない為に茉白が言葉を遮る


結莉乃
「……っ…違います。茉白ちゃんが刺されたのは私を庇ってくれたからなんです」


眠っていた筈の結莉乃の声に全員が同じ方向を見る。すると、ふらつきながらも結莉乃が皆の方へ歩いてきていた。争って欲しくないから手紙を書いたのに、自分のせいで…結莉乃はそう思い必死で身体を動かした。

そんな結莉乃を見た瞬間すぐに身体が動いたのは茉白で…ふらつく結莉乃を優しく支える


結莉乃
「ありがとう…」

茉白
「大丈夫?」

結莉乃
「うん。…胤晴さん聞いて下さい」


結莉乃を見る胤晴の瞳は園華達に向けていたものよりも遥かに優しくなる



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