第9章 力を貸して下さい
茉白
「結莉乃さん…っ…私の事は、良いから…今日はまだ、休んで無いんだから…体力が…」
翳される右手を茉白が震える手で掴む。異形に会う前も人を助ける為に力を使ってきたのだから、疲れが蓄積されているだろうからと茉白は止めさせようとする
茉白
「貴女の、っ…体力消耗は…恐らく、…傷の具合で変わる…皆、重症だった…だから、使い過ぎて目眩を、起こした…っ…私の傷は、貴女の…体力を削ってしまう…良いから、逃げて…っ」
結莉乃
「逃げない!茉白ちゃんの予想通りだとしても私は絶対に貴女を治す!」
その間にも水色の光を攻撃する手を異形は止めず、その衝撃に結莉乃は表情を歪ませる
異形
「壊レナイ…クソ…ッ」
額に汗を滲ませながら結莉乃は茉白を治す。だが、二つの力を使っているからか傷の治りが遅い。段々と防御の力が押され始める
茉白
「結莉乃さ─」
「ふざけんじゃねぇ!」
異形
「……ッ?」
上から降ってきた何者かによって防御の力を押されるのが弱まり結莉乃は驚いて顔を向ける。すると、そこには二人に背中を向ける凛子がいた
結莉乃
「え…さっきのって…」
茉白
「凛子様…は、っ…怒ると口調が、荒っぽくなるの…」
結莉乃
「へぇ……って見てる場合じゃなかった」
凛子の助太刀のお陰で結莉乃は茉白の治癒に集中する事が出来るようになった。その間にも両手に短刀を持っている凛子の猛攻は異形を押していた
凛子
「茉白ちゃん怪我させて治してる結莉乃ちゃんに攻撃するおめぇを凛子は許さない!」
普段、他人を呼ぶ時は“貴女”と言う凛子は怒ると“おめぇ”に変わるのだと結莉乃は茉白の傷を治しながら思った。
短刀を交互に出したり、蹴りを繰り出したりと色んな技を繰り出す。いつもは愛らしくどこか子供っぽく笑う凛子だが、好戦的に目を見開いて笑う凛子は別人の様だ