第9章 力を貸して下さい
暫く歩き回ってみたが中々現れない異形に、今日は無理かと諦めた時─…
「オ前ガ…傷…治シテル奴カ」
結莉乃
「……っ…」
茉白
「下がって」
木の影から、ぬるっと現れたのは細身で猫背の人に近い異形だった。だが、発せられる声はやはり歪で不気味なものだった。ぎょろりとした目が結莉乃を捕らえて離さない。結莉乃を庇う様に前へ出た茉白の手は既に柄に添えられていた
異形
「セっかク…傷ヲ負ワセテ、弱ラセ…眠ラセタトイウノニ…オ前許サナイ」
凄い勢いで距離を詰めてくる異形に向かって素早く抜刀した茉白の刀が異形の腹部を掠めるが、寸前でかわされてしまった。結莉乃も慌てて抜刀する
茉白の動きは早くて異形が押されているのが分かる
異形
「オ前…邪魔」
茉白
「く…っ」
鋭い爪の大きい掌を振ると、それが茉白の身体に当たり彼女を飛ばしてしまう。茉白の身体は大木にぶつかる
結莉乃
「茉白ちゃん!」
異形
「余所見スルナ」
結莉乃
「…っ…!」
大きい掌を結莉乃は刀で受け止め、正面から蹴りを腹部へ入れる
異形
「ウッ……絶対、オ前…殺ス」
牙を剥き出しにして二足歩行で走ってくる異形を避けようとした結莉乃の前に、滑り込んだ茉白の身体に更に尖り出た爪がめり込む
茉白
「ぁぐ…っ…!」
結莉乃
「茉白ちゃん!」
腹部に貫通した爪が引き抜かれると茉白の身体が崩れ落ちる。結莉乃が慌てて駆け寄ると茉白の身体から赤い液体が溢れ出てくる
結莉乃
「すぐっ…すぐ治すから…!」
結莉乃は慌てて茉白の腹部へ右手を翳し傷を治していく。だが、その間にも異形は腕を振り上げて背中を向けている結莉乃へ爪を立てようとする
結莉乃
「邪魔しないで!」
異形
「何ダ…ッ?」
横目で近付いているのを確認した結莉乃は異形へ左手を向け、水色の光を出現させ攻撃を防ぐ。両方の光を同時に出した事が無かった結莉乃だったが、無我夢中で出現させていた