第9章 力を貸して下さい
楓奈
「結莉乃さん。園華様がお呼びです」
結莉乃
「え?あ、はいっ」
襖越しに掛けられた声に結莉乃は慌てて立ち上がり廊下へ出る。楓奈に案内されて園華の部屋に辿り着くと声を掛ける
結莉乃
「園華さん、結莉乃です」
園華
「お入りください」
許可を得ると結莉乃は襖を開ける。すると中には既に茉白と凛子が座っていた。結莉乃も慌てて並ぶ様に腰掛ける
園華
「町の民を治して下さりありがとうございました」
結莉乃
「いえ」
園華
「それで原因となっている異形についてですが…凛ちゃんに調査を頼んだ所、見付かったそうです」
その報告に結莉乃と茉白は目を丸くして凛子へ視線を向ける
凛子
「二人と離れたのはこの為よ。見付けられたのも偶然だけどね。眠らせる異形は結莉乃ちゃん」
結莉乃
「はい」
凛子
「貴女に対して怒っているみたい。だから、すぐに見付けられたの。貴女の事を見ていたみたいだから」
結莉乃
「私を…」
茉白
「傷を治しているから…ですか?」
園華
「ええ、その可能性が高い。でも、結莉乃さんが居るから必ず現れるとも限りません」
結莉乃
「町を歩いて見れば分かりますね。それで見付けられれば…」
園華
「はい。…ですが、無理だけはせんで下さい」
結莉乃
「はい!」
園華
「茉白。結莉乃さんの傍に居て下さい」
茉白
「分かりました」
先程、見付けられた為もしかしたらすぐに現れるかもしれないという事でまだ明るい今から探し始める事にした。
今回は馬に乗る事なく、結莉乃は茉白と町をゆっくりと歩く
結莉乃
「現れて倒す事が出来たら皆さん目を覚ましてくれるかな」
茉白
「恐らくは…。でも、怖くないの?」
結莉乃
「怖いけど…早く目を覚まして欲しいから」
こんなにも思ってくれる彼女を絶対に守りたいと、茉白は一人改めて気を引き締める