第9章 力を貸して下さい
結莉乃
「わっ…!」
「貴女が結莉乃ちゃんね?」
結莉乃
「え?えと…はい、そうですけど…」
ぶつかる…というよりも突進してきたのは顎までの髪と同じ栗色の猫耳が生えた女性だった。髪の右側一部が蜜柑色の彼女は二又の尻尾を揺らして結莉乃を抱き締めながら見詰めている
凛子
「やっぱり!あ、凛子の名前は猫宮 凛子 (ネコミヤ リンコ)。凛ちゃんって呼んで?」
猫目の中で弁柄色の瞳が輝き結莉乃から逸れない。結莉乃はその真っ直ぐな瞳に戸惑いながらも笑みを浮かべる
結莉乃
「よ、宜しくお願いします…」
凛子
「あ、敬語なんて使っちゃ駄目よ」
結莉乃
「分か、った」
園華
「こら、凛ちゃん。結莉乃さんが困ってはるやろ?はよ、離してあげ」
凛子
「はぁい」
見兼ねた園華の言葉で凛子が渋々といった様子で離れてくれれば結莉乃は小さく息を吐き出す。それを見て茉白が結莉乃の近くに来て声を掛ける
茉白
「大丈夫?」
結莉乃
「あ、うん。大丈夫!」
凛子
「あれ?あれれれぇ?茉白ちゃんってば、結莉乃ちゃんとはそんな風に話すの?凛子達には敬語なのに」
その声を聞いて再び凛子が近付いてくる。凛子の表情はどこか拗ねた様で茉白は戸惑い園華に助けを求める様な視線を向けるが、園華はわざとらしく狐耳を垂らして残念そうにする
その表情に茉白は、うっ…と言葉に詰まり視線を逸らす
茉白
「園華様たちはお友達じゃありません。領主様ですし…」
園華
「えぇ?そない寂しい事言われたら悲しくなるわぁ…ね?凛ちゃん」
凛子
「本当だよぉ!」
茉白
「いえっ、そういうつもりでは…っ」
結莉乃
「ふふ…」
茉白
「わ、笑ってないで…助けてよ」
結莉乃
「皆さん仲が良いんだなって」
園華の揶揄っているような言葉に凛子の本当に抗議しているようなそれと、本気で困っている茉白を見て結莉乃は仲が良いんだなと楽しくなってしまった。