第9章 力を貸して下さい
封を切り長に入っている色とりどりの花に囲まれた結莉乃の文字へ胤晴は目を通す
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皆さんへ
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いきなり居なくなってしまい申し訳ありません。
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今はとある領に居ます。
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此処の領で不思議な異形が居るらしく…
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私はその異形のせいで傷付いた人達の怪我を
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治していきたいです。
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此処の人達を治してから戻ります。
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あ、勿論壬生が嫌になった訳ではないので
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戻らせて頂きます。
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なので、また受け入れてくださると
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嬉しい限りです。
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私は無事です。ご迷惑をお掛けしますが
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宜しくお願いします。 結莉乃
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胤晴
「何とも彼女らしい手紙だな」
読み終えた胤晴は呟いてから、手紙を凪へ渡す
凪
「…そうですね。連れ去られた筈なのに領の人を助けるなんて」
目を通した凪も小さく息を吐き出したがら言葉を返す。彼等には結莉乃が隠した所でバレてしまっていた。他領へ連れ去られ治癒の力を使わせられる、と。
胤晴
「どこの領か言わなかったのは連れ戻されるまでの時間を稼ぐ為か…その領と関係が崩れるのを避ける為だろう」
凪
「彼女なら後者でしょうね。被害者でも事情を知り自分から力になりに行く…彼女らしいです」
胤晴
「そうだな。彼女の文面からしてこの手紙が脅されながら書いたのでは無い事は分かった。だが、その不思議な異形とやらの被害に遭ってからでは遅い。少しずつ調査する」
凪
「はっ」
手紙が彼女が望んで書いたものだと予想し、彼女が居る領を全力で探させる事はしないと胤晴は決めた。自ら望んで人を治そうとしている所と無事だという言葉を信じたのだ
凪は頭を下げて胤晴の部屋から出ると、結莉乃の手紙を全員へ見せ命を伝えた