第9章 力を貸して下さい
結莉乃
「茉白ちゃん、って呼んで良い?あ、敬語もいらないのでっ」
茉白
「え、ぇ?…そんないきなり言われても…」
結莉乃
「あ、すみません…嬉しくて」
ゲームの中で可愛いと思っていた茉白と友達になれたという事実が結莉乃は嬉しくて、早口になってしまう。戸惑った茉白を見て少し落ち着く
茉白
「私の事はお好きに呼んで下さい。敬語は…徐々に外していけたら、と」
結莉乃
「うんうん、それで良い!ありがとう」
戸惑いながらも茉白の心は暖かくて、ふわふわとした気分になっていた。その後、会話をしながら結莉乃は胤晴達への手紙を書き終え茉白に渡す
茉白
「責任を持ってお届けしま…届ける、ね」
結莉乃
「うん、お願いします」
茉白
「今から発って明日には届くと思…う」
結莉乃
「分かった。ありがとう」
茉白
「では、また明日。お休みなさい」
結莉乃
「お休みなさい」
少しずつでも敬語を外そうと努力する茉白の姿が可愛くて結莉乃の表情は緩んでばかりだった。大事に封筒を持った茉白が去る時に見えた丸くてふわふわした尻尾は小さく揺れていた
結莉乃
(私も此処にそんなに時間かからずに来れたし、手紙もすぐ届くんだ…)
─翌朝 壬生領の鬼城にて…
凪
「……っ」
郵便物を確認していた凪が一枚の封筒を見て目を丸くし、珍しく慌てた様子で屋敷の中を歩く
凪
「失礼します」
一つ断りを入れて凪は胤晴の部屋へ入室する。許可を得る前に凪が入る事は珍しい為、胤晴は僅か驚きつつも何かあった事を理解する
凪
「王、これを見て下さい」
胤晴
「手紙?……っ…結莉乃から」
差出人を確認した胤晴は息を呑む。前日の祭りでいなくなった結莉乃からの手紙であった事に、緊張と安堵の表情が胤晴と凪に滲む