第9章 力を貸して下さい
結莉乃
「それに!今も部隊長であるのなら今まで茉白さんは危機を脱する為に力を尽くしてきた証拠だと思います」
今までは一人で危機に立ち向かってきた。それが部隊長になって一人じゃなくなった…危機があっても部隊の隊士達と乗り越えてきた。そうして来たはずなのに、期待の重みを勝手に増させて不安に大事な事を忘れていたと茉白は気付く
茉白
「ありがとうございます。…結莉乃さんの言葉って何だか力がありますね」
結莉乃
「え、そうですか?…何か偉そうな事言ってませんでした…?」
茉白
「いえ、大事な事を思い出せました」
不安げに揺れていた露草色の瞳に強さが宿った気がして結莉乃は安堵し手の甲に重ねていた手を離す
結莉乃
「あ!」
茉白
「どうかしましたか?」
結莉乃
「手…出して下さい」
茉白
「?…はい」
茉白は突然、告げられたそれに不思議そうにしながらも結莉乃へ両掌を上に向けて差し出す。すると、白い掌に爪の痕に切れて血が固まっていた。結莉乃は両手を包み込む
結莉乃
「掌に傷が出来てしまうくらい強く握る程、皆さんが大事なんですよね。…私も皆さんが目を覚ませるよう原因を一緒に探します」
茉白
「結莉乃さん…」
嬉しくて暖かい言葉に茉白は眉と共に長い耳を垂らす。自分は首元に刃を向けてしまったというのに…と。
だが、まるでそれを大丈夫と言っているように淡い光が傷に染み込み治っていく
茉白
「ありがとうございます。…でも、大丈夫ですか?体調が…」
結莉乃
「少しなら大丈夫です。…あ、茉白さん」
茉白
「はい」
結莉乃
「私と…お友達になりませんか?」
茉白
「…え…?」
予想も出来なかった言葉に茉白は固まる
茉白
(友達、なんて…出来た事ない)
どこか周りと距離を置く癖があった茉白は昔から友達と呼べる存在は居なかった。だから、結莉乃からの申し出が嬉しくもあり躊躇いもあった。だが…
茉白
「はい。なりたいです」
気付いたらそう答えていた。結莉乃は嬉しそうに表情を緩ませた