第9章 力を貸して下さい
園華
「茉白」
紫の瞳に促されて茉白は頷くと、説明する為に結莉乃へ視線を向ける
茉白
「はい。…私が見付けた時、彼女達は血塗れの状態で倒れていました。慌てて駆け寄ると大怪我をしているのに苦しい表情も無く彼女達は血溜まりの中なのに、まるで布団の中の様に眠っていました。…それから一度も目を覚ましません」
園華
「そこで、あんさんの力を貸して欲しいのです」
結莉乃
「で、でも…私は傷や病気を治せるだけで眠りを覚ます事は…」
園華
「それでも良いのです。彼女達は重篤な状態です。恥ずかしながら私は領主と同時に医者でもあるのに…彼女達の命を繋ぎ止めておくんがやっとで…。回復出来る所までは持って行かれへんのです」
結莉乃
「恥ずかしいなんて…園華さんや他のお医者さんのお陰で皆さん生きているんだと思います。だから、私でお役に立てるならやります…!」
悲痛な表情を浮かべる園華と強く握り締めている掌に爪が食い込み血が滲み出した茉白を見て、結莉乃は力になりたかった
園華
「ありがとうございます。この部屋以外にも被害に遭った者がおりまして…町の民にも」
結莉乃
「必ず皆さん助けてみせます!」
そうは言ったものの、この部屋だけでも十人は居る。そんな人数を連続で治癒した事がない結莉乃は少し不安になる
結莉乃
(弱気になっちゃ駄目だ!)
首を横に振ると小さく息を吐いて一番近くに寝ている女性に近付き手を翳す。結莉乃の掌から淡い光が現れ彼女の頭部と腹部の傷へ染み込んでいく。その様子を初めて見る茉白は僅かに目を丸くする
光が消えると園華が女性へ近付き頭部の包帯を優しく取っていく
茉白
「治っ…てる…」
園華
「こんな凄い力があるなんて…」
結莉乃
(…良かった)
今まであった深い傷が、最初から無かったような状態になっており園華と茉白が感動している横で結莉乃は安堵の息を零した。包帯を取って治っていなかったらと不安だったが、傷がない状態を見て肩からも力を抜いた