第9章 力を貸して下さい
園華
「大半が殺すという言葉か呻きしか発さず、物理攻撃のみです。ですが極稀に言葉を話し物理以外の攻撃をしてくる者がおります」
結莉乃
「あ…」
園華
「出会った事がおありで?」
結莉乃
「あ、はい…つい最近。人型に近い異形で…取り込まれてしまった時に言葉を話していました」
園華
「取り込まれた?」
結莉乃
「はい、何故かは分かりませんが取り込まれてしまって」
園華
「そない話は初めて聞きましたね。…その言葉は取り込まれた時だけでしたか?」
結莉乃
「はい。その前は人型で他の異形とは違うという事しかありませんでした」
園華
「成程…」
園華は顎に指を添えて何かを考えている様だった。自分の知らなかった事を纏めているような様子に結莉乃は静かにしていた
園華
「あんさんが出会ったのも間違いなく稀な存在です。そして、このお話をさせて頂いたのは物理以外の攻撃を、恐らく受けたからです」
結莉乃
「物理以外の攻撃…」
園華
「見て頂いた方が早いかもしれません。…ついてきて下さい」
鮮やかな着物に身を包んだ園華が立ち上がり促されれば彼女の後ろを歩く。そして、結莉乃の後ろには部屋の隅で待機していた茉白がついていく
衛生室に到着すると園華が襖を開ける
結莉乃
「……っ…」
幾つも並んでいる寝台の上に包帯を巻いている獣耳や尻尾を持っている女性達が眠っていた。皆が大怪我をしている様にも見えるのに苦しむ様子も無く、すやすやと寝息をたてている
園華
「彼女達は茉白が率いる部隊の隊士達です」
結莉乃
「えっ」
結莉乃は思わず後ろにいた茉白を振り返る。茉白は表情を変えなかったが、握り締められている拳が悔しさを表していた