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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第9章 力を貸して下さい




「お初にお目にかかります、結莉乃さん。ご足労頂いてありがとうございます。ようこそ杠へ…私は此処の領主、比類谷 園華 (ヒルイタニ ソノカ)言います」


華と艶を纏った様な園華の姿に結莉乃は息を呑む。


結莉乃
(不思議な話し方…)


標準語とも関西弁とも言えない完璧では無い言葉…、園華のゆったりとした口調から述べられるそれに結莉乃は不思議に感じる。だが、それが園華の魅力を上げているようにも思った

お尻までの黒髪が毛先にかけて柿色になっているのに合い狐の耳は右が黒、左が柿色に分かれており結莉乃はそこに目がいくが…それよりも向かってしまったのが彼女の背中で揺れる九尾だった


結莉乃
(凄い…本物の尻尾だ)


人の姿にある獣耳と尻尾は現実味がなくて結莉乃は何度でも見てしまう。だが、挨拶をされたのに黙っているのは良くないと思えば結莉乃は頭を下げる


結莉乃
「華岡結莉乃です。宜しくお願いします…?」

園華
「あんさんの事は存じとります。…それから、治癒の力が使えるんも知っとります。雨の日で…倒れていたので誰かは分かりませんが、男性を治している事は分かりました」

結莉乃
(雨の日……慎太くんを治した日だ。雨だったし、何より必死だったから気付かなかった…)


それなら誰か治してほしい人でもいるのかな、と結莉乃は思いながらも未だ連れて来られた理由を聞いていないため戸惑ってしまう。園華の密度の高い睫毛に切れ長に縁取られた中で紫の瞳が結莉乃を見詰める


園華
「招くのではなく攫う形になってしまった事は謝ります、申し訳ありません。ですが、あんさんの力を貸して欲しいのです」


不思議な話し方も気にならない程の園華の空気に結莉乃は、じっと彼女を見詰める


結莉乃
「誰か…治して欲しい方がいる、という事ですか?」

園華
「はい。…あんさんは異形に階級があるのをご存知ですか?」

結莉乃
(そういえば…)


そう思ったものの結莉乃は知らないを貫くと決めた為、園華の問いに首を横に振った



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