第9章 力を貸して下さい
結莉乃
(でも他領のキャラって物語に出てきたけど、関わりはそこまで無かった気がするけど…。茉白ちゃんを私が覚えてたのは可愛いからだけど、あんまり出てこなかったし。やっぱりこれもゲームとは違う事なんだ)
そう思うと結莉乃はゲームがとか変な事は言わない方が良いと思い、全て初めてだというのを決め込む事にした。
茉白
「あの…?」
結莉乃
「あ、いえ…すみません。その…驚きましたけど、大丈夫です」
茉白の言葉に返事をしていなかったのを思い出し慌てて返す。馬上にいる結莉乃を見上げる茉白の大きく目尻が僅かにつり上がっている目の中で輝く、露草色の瞳に捕えられ結莉乃は少し恥ずかしくなる
結莉乃
(やっぱり可愛い…)
何て連れ去られたにも関わらず呑気に考えていた。こういう所はこの世界に来た時と、やはり変わっていなかった…というよりも何だかんだ上手くいっているため余計に楽観的なのかもしれない。
茉白は攫ったにも関わらず簡単に許されると思っておらず、驚いた様に目を丸くする
茉白
(不思議な方…)
暫く無言で馬に揺られると大きくて鮮やかな城が結莉乃の視界に入り、思わず感動の息を零す。
茉白
「ここからは歩いて頂きます。どうぞ」
手を差し出されると結莉乃は少し躊躇いつつも手を重ね、茉白に降ろしてもらう。門番が赤い門を開けると、城の鮮やかさがより鮮明になったように結莉乃は感じる
これから何が起こるのか分からない結莉乃は、城の綺麗さに感動しつつも緊張もしていた。城の中も綺麗な彫刻が施されており結莉乃の目を楽しませるが、鼓動は早くなるばかりだった
茉白が襖の前で止まると結莉乃は細く息を吐き出す
茉白
「茉白です。お連れ致しました」
「通して頂戴」
中から艶のある綺麗な声が聞こえれば結莉乃の背筋が伸びた
茉白
「はい。…どうぞ、お入り下さい」
許可を得て茉白は襖を開き結莉乃へ入室する様、促す。結莉乃はお辞儀をして部屋へと入った