第9章 力を貸して下さい
眞秀
「な、結莉乃─って…大将!結莉乃が居ません!」
胤晴
「何…?」
天音
「はァ!?アイツ迷子になったンか!?」
人の波に攫われたのか…そう思うものの全員の胸中は違う不安で占めていた。だが、それを払拭しようと胤晴が声を上げる
胤晴
「手分けして彼女を捜すぞ」
凪、眞秀、慎太、八一、天音
「はい/ッス!」
人の間を縫って全員で結莉乃を捜し始める。鬼の中でも戦っている事もあり気配には敏感な六人が、居なくなった気配を感じなかったというのが違和感を与えた
彼等がどれだけ捜しても彼女の痕跡一つ見付けられなかった…。
その頃、結莉乃は初めて壬生領を女性が連れていた馬に乗せられて出た。彼女は結莉乃が乗る馬の手綱を引き、出領手続きを終えた。
出る前に結莉乃は顔を隠すように言われており、逆らわない方が良いと思い大人しく渡された羽織を被っていた
「顔を上げてください」
結莉乃
「……っわ…」
許可が出るまで顔を上げる事は出来なかった結莉乃だったが、彼女の許可が出てゆっくりと顔を上げると…そこは壬生の領とは異なる景色が広がっていた。
鮮やかで女性らしい華やかさのある町並みと、他種族とは違う耳や尻尾がある女性達が談笑しながら歩いていた。夜という事もあり人通りは少ない様に感じつつ…結莉乃は町並みの美しさに目を奪われていた
結莉乃
(此処ってもしかして…)
無言で手綱を引いていた女性も被り物をとる。するとその頭には、ぴんっと立つ兎の耳があった。腰まで伸びる緑がかった金色の髪は耳と同じ色をしていた
自分には無く、そしてスマホを通した画像でしか見た事が無かった人の姿をした者にある獣の耳に驚いていた。
「手荒な事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
歩いている最中に女性が馬に乗っている結莉乃を見上げる。ずっと見えなかった女性の顔が被り物が無くなった事と提灯によって見え、結莉乃は女性が誰なのか認識する
結莉乃
(茉白ちゃん…だ)
その名前が自然と出た事により、この領が自分が思った場所で合っていた事を理解した