第8章 賑やかな祭りではご用心を
推しが自分の為に…なんて思って結莉乃は表情が緩む。そして、景品台の方へ目を向けると凪から貰った小人の色違いが目に入った
結莉乃
「あれが良い」
眞秀
「よし、任せろ」
眞秀は袖を軽く捲ると小人を狙い…見事命中して小人は結莉乃の手の中にやってきた
結莉乃
「ありがとう、眞秀くん」
眞秀
「おう。結莉乃が言ったやつが取れて良かったわ」
慎太
「よし」
その隣で慎太が小さく気合を入れた。慎太は立ててある紙に狙いを決めると、難なくそれに命中させる。受け取ったその紙を当然の様に結莉乃に渡す
結莉乃
「かき氷券?」
慎太
「ん、それでかき氷が交換出来る」
結莉乃
「へぇ…嬉しい!ありがとう!」
結莉乃のお礼に頷きつつも軽く顔を逸らす
八一
「ははっ、慎太が照れてる」
慎太
「照れていない」
八一
「ま、そういう事にしておくよ」
茶々を入れていた八一も一つの物に狙いを決め当たり前のように命中させる
八一
「はい。俺も結莉乃ちゃんにあげる」
結莉乃
「飴だ…ありがとう、八一くん」
八一
「どういたしまして」
色とりどりの、ころんっとした飴が沢山入った瓶を見て結莉乃は笑みを浮かべた。その間に暫く静かにしていた天音が立つ。一番、文句を言いそうな天音がちゃんと射的をやろうとしているのが結莉乃には少し意外だった
何も言わずに天音は一枚の紙を狙い撃ち落とす
天音
「ホレ」
結莉乃
「鏡…」
天音
「アンタに合うと思った」
結莉乃
「凄い綺麗…ありがとう」
椿と鞠が表面に刻まれた色鮮やかな手鏡だった。綺麗な細工に結莉乃が眺めているのを天音は横目で見た。彼女が喜んでくれた様で天音は僅か安堵をした
結莉乃は出掛ける前に若葉から渡された鞄のがま口を開けると凪と眞秀の小人と八一の飴、天音の鏡を大事にしまった。慎太のかき氷券はすぐに使うだろうと懐へ入れた