第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
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信濃も一期も退出し、執務室にはしばしの静寂が訪れる。
なんとなく、心が和らいだ。
一期と少しは打ち解けられたかな……。
残務に手をつけている内に、襖の向こうで「主ー!」と声がした。
戸を引くと、そこにいたのは不動くんだった。
「夕ごはんだよ、主」
「えっ、もうそんな時間!?」
びっくりして時計を見る。
たしかに、時計の針は夕ごはんの時刻を指していた。
かなり集中していたらしい。
午後、上映会で思いのほか時間を使ってしまったから、急いで残務を片付けようと思ったらこれだ。
なお後悔は微塵もない。
「あ、あのさ、あるじ……」
そんなふうに思っていると、不動くんがもじもじしだす。
え、なに? 非常にかわいいんだが?
「俺のも……見せたの?」
ちょっと上目遣いに、そう尋ねてくる。
声は緊張していて、頬もうっすら桜色に染まっていた。
なんのことか一瞬わからなかったが、はたと思い当たる。
どうやら、3時のおやつに一期に披露した、1年後の自分たちへのメッセージ動画のことらしい。
ちなみに、不動くんの1年前というと、極める前だ。
つまり、常に酩酊状態で、ダメ刀と自嘲しては皮肉と嫌味を繰り出す、また違った拗れ方をしていたときだ。
絡みが面倒くさい酔っ払い、と言っては身も蓋もないが、前田をはじめとした優等生たちから、しばしば
「主君に向かってその言い方はないですよ」
などと窘められていたっけ。
とは言え、任務は頼めば問題なくこなしてくれたし、彼の言動の背景を考えたら涙ぐみそうになるので、極前の不動くんも愛すべき男士たちの一人であった。
それが、修行から帰ってきたと思ったら、こんな小さな忠臣となっていたのだ。
無事、発狂した。