第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
「信濃、ありがとうね」
一期が「顔を洗って参ります」と離席している間に、私は信濃に礼を言った。
信濃はキョトンとした顔で目をぱちくりさせる。
うん、あまりのアイドル的なベリーキュートさに眩暈がてきた。
「ん?」
「信濃がいてくれて良かったよ」
心からの言葉だった。私一人だったら、突然泣き出す一期一振は手に負えなかっただろう。
彼との距離感を探っている今の状態では、信濃の無邪気さ、ひとなつっこさがどれだけ助けになったかわからない。
そんな私の意図を知ってか知らずか。
たぶん、わかっているんだろう。
その上で、これくらいなんのことはないんだ、頼ってくれていいんだよと、そんな優しさを振りまいてくれているのだろう。
「まぁ俺、秘蔵っ子だからね!」
信濃はそう言って、とびっきりの笑顔を弾けさせた。