第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
藤四郎たちの中で、一期との接し方に一番遠慮がないのが、信濃だ。
ほかの、たとえば薬研や平野、あの乱も距離感を測っている途中なのか、普段の彼ら100%ではない。素は小出しにされている。
けれど、信濃はちょっと違う。
ほぼ、素なのだ。
易々と一期の懐に飛びこみ、天真爛漫な笑顔で甘える。
はじめは戸惑っていた一期も、だんだんと慣れ、笑顔で応じることも多くなっていた。
無邪気なのだ。
相手も自分のことを好ましく思っているだろうと、屈託なく信じている。
大事に大事にされてきた、まさに“秘蔵っ子”そのとおりなのだ。
たくさんの愛と慈しみを注がれてきた信濃は、もらったそれらを当たり前に、惜しみなく他者にもあげられるのだろう。
そしてそれが受け入れられると、なんの捻れもなく、まっすぐに信じている。
だからといって、決して押しつけがましくはない。
軽やかで、なのに深くてあたたかいのだ。
素直な自己肯定が感じられて、そんな信濃に羨ましさと尊敬を抱いてしまう。
なんてことを以前、早口で照れながら言ったら、こてっと首を傾げたのち「まぁ俺、秘蔵っ子だからね!」とにっこりされたっけ。