第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
「もしそうなら本当にごめんなさい!」
「…………いえ……」
やっと絞り出された言葉は、そんな否定(?)だった。
嫌な思いをさせたばかりか、気を遣わせてしまうなんて。
後悔の大波に呑まれそうになりながら「すぐ消すね!」と端末を操作しようとすると、グイと右腕を掴まれる。
えっ、と思って自分の右腕を辿ると、視線は一期の手に到着した。
短刀ばかりであまり目にすることのなかった、青年の力強く大きな手。
短刀のふにゃふにゃとした小さい手と比べると、少しゴツゴツしていた。
頑丈そうな関節から伸びる指は、すらりと長い。
その手が、ぎゅうと私の腕を掴んでいた。
一期は頬に一筋の涙の跡を残し、それはそれは端整な顔立ち(無表情)で見つめてくる。
掴まれている箇所と顔の温度が急上昇している気がした。
審神者同期に一期一振ガチ勢がいるが、彼女に、一期がいかにロイヤルで王子かを懇々と説かれたことをなぜか思い出す。
「続きをお願いします」
「えっ……」
「続きをお願いします」
「ハ、ハイ」
有無を言わさない声音で言われ、弾かれたように端末から手を離した。
「1年後の自分へビデオメッセージ」とタイトルが付けられたファイルは、当然のように再生を続ける。
心臓がばくばくする。ちょっと待って。
照れるか、やらかしに焦るか、無表情に続きを促されたことに困惑するか、どれかの感情に集中させてほしい。
混乱している中、動画が次の男士に変わる。
映し出されたのは、当本丸二番目の古株、ごこちゃんこと五虎退だ。