第1章 鍛刀力がありすぎる審神者
「まだですか主さまぁ~~!」
「うるさい。私は優柔不断でもあるの」
初期刀選びに費やしたのは、もうかれこれ三時間。
たまらなくなったらしいこんのすけが呻いた。
それをぴしゃりとはねのけ、私は候補の刀剣たちを凝視する。
五振りそれぞれがとても魅力的だ。
こんのすけに「全員」と言うと「は?」と威圧が返ってきたので、もう三時間にもなってしまった。
「あとから鍛刀や出陣でどの刀剣男士にも出会えますから!」
「お黙りなさい! そういう問題じゃない!」
「主さまあ~~~!」
なおもぐずるこんのすけが、唐突ににぴたりと止まった。
無言でビー玉のような目をぱちくりさせる。
え? なに? おせーよという政府からの苦情?
「……主さま……」
「なに、どうしたの」
その顔は心なしか、少し青ざめていた。
遠慮がちな声もそうだ。
いたずらが発覚したと思って、怒っていないか探りを入れてきている子どものようにも見える。
「あの……ひとまず鍛刀していただくことになりました……」
「は?」
こんのすけが、凄まじく言いづらそうに続ける。
「初期刀として派遣できる刀剣男士の在庫が切れた、と入電が――」
「……はあああああ?」
「申し訳ありません~~~!!」
在庫ってなに。在庫て。
なら補充しとけよ、新人バイトか!
平謝りするこんのすけ。
政府のかわりに謝り続ける一匹を、いつまでも威圧し返していても埒が明かない。
「オーケー、鍛刀部屋に行きましょう」
私は言われた通り、鍛刀を試みることにした。