第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
そのあとやってきたのは、栄えある本日の近侍、不動くんだ。
彼はうってかわって(と言うと今剣と乱ちゃんに怒られそうだが)大真面目に一緒に考えてくれた。
「一期一振……さんに俺たちを紹介するんだよね」
いまいち距離感がわからないのか、どこかたどたどしく「さん」を付け足す不動くん。
あまりニヤニヤしないように努めながら、話をしてみる。
「短刀だけで、同じ刀種がいないって居心地どうなのかな? と思うのよ」
「確かに……もし本丸で、俺一人だけ短刀で、しかもよその本丸から来た身だったら……ちょっと不安だな」
「そうだよね」
「主は大事にしてくれる人なんだ、って伝わればいいんだけどな」
天気の話でもするような口調で、不動くんが言った。
当たり前のことのように話しているが、よくよく顔を覗いてみると、その頬にさっと朱が差す。
「あ、照れてる」
「ちっちがっ!」
不動くんがあわあわと否定するが、それが何よりの証拠だった。
「どうしてそんなにかっこよくてかわいいの?」
「主こそ、よくそんなこと真顔で言えるよね!」
「真にそう思ってるからね」
「そこドヤ顔するところかな!?」
最近ツッコミのキレも冴えてきた不動くんが、はぁとため息をついた。
それから私がにらめっこしているPCのディスプレイに目をやる。
ディスプレイは、動画の一覧をファイル名で映し出していた。
スクロールしつつ上から順にファイル名を辿っていた不動くんの視線が、ふと止まる。
彼はちょっとだけ苦い笑みに眉をハの字にしてから、おずおずと私の方を振り向いた。
「主、これとか紹介に使いやすいんじゃないかな?」
不動くんが指で示したファイル名を見て、私は思わずあ、と声をあげた。
不動くんは引き続き頬を赤らめて「俺は恥ずかしいんだけどね……」とゴニョゴニョ呟いていたが、私の心は決まった。