第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
「というわけで、ここは短刀しかいないんだけど、あまり気にせず普通に過ごしてもらえたらと思います」
「……よろしくお願い申し上げる」
精一杯、作った笑顔だった。
まだ前の本丸での傷が癒えていないだろうに、無理して口角を上げているようだ。
当然といえば当然だが、一期一振の纏う空気は、ずん……と重かった。
審神者が突然いなくなったのだ。まるで、自分達を見捨てて。
あるいは刀剣ならばこう思い詰めるだろうか。
「主を守れなかった」
そんな彼が刀解でなく、他の人間の、しかも私の本丸でまた戦う、という選択肢を選んでくれたことに、例えようもない嬉しさを覚えてしまった。
少しでも彼の心が楽になれるよう、この本丸が一期一振にとって心地のいい空間になれるよう努力しようと決意した。
というか、短刀ばかりで毎日毎日きゃっきゃと楽しく騒がしく過ごしていたので、自分たちが戦争中であることをハッと思い出したくらいだ。
気を引き締めなければ。
短刀たちのホームビデオの編集で寝不足になっている場合じゃない。
編集中に見つけた、神がかったかわいすぎる瞬間(1000000000000個以上)をループ再生しまくって編集どころでなくなってる場合じゃない。
戦闘に支障でも出たらどうする。
などと自分を叱りながら、しばらく戦闘や近侍につく必要はないことを一期一振に説明した。
政府からも一度説明を受けたようだが、審神者である私からもした方がいいだろう。
まずは心身の休息をとり、本人が望むなら短刀たちとコミュニケーションをとればいい。
短刀たちにも一期一振の来歴は伝えてあった。
短刀たちは一期一振の様子を注意深く窺いつつ、距離感を測っていた。
私は手始めに、そんな短刀たちを紹介することから始めた。