第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
そんなホワイト特殊本丸の審神者である私に、政府からとある依頼があった。
他の本丸にいた刀剣男士を受け入れてもらえないか、という依頼だった。
他の本丸というのが、いわゆるブラック本丸というわけではないのだが、穏やかではない代物なのだ。
いわく、まだ新人の部類に入る審神者が、ある日突然行方不明になったのだという。
自ら姿をくらましたのか、何者かに連れ去られたのか。
詳細は調査中だと聞かされた。
手がかりがないばかりか、恐ろしいことに、似たような行方不明事件が頻発しているらしい。
ただでさえ万年人手不足の政府だ。
結構な日にちが経った今や、私に掛け合われた事案の調査は、打ち切りも同然の様相を呈していた。
行方不明になった審神者は体が弱く、本丸は少数精鋭だったという。
とは言え、それでも残された男士たちは十数人もいた。
審神者の霊力が少々特異な性質だったため、男士全員を受け持てるだけの引き継ぎも見つからず。
結局、男士はそれぞれ別の本丸に散ってもらうことになったらしい。
それで誰が来るのかと聞けば、なんと一期一振だという。
短刀たちに事情を説明した上で意見を聞いてみると、みんな、特に粟田口は大歓迎だった。
純粋に新たな男士を喜ぶ者、他の刀種が来ることで手合わせや戦術の幅が広がると喜ぶ者。
さまざまだったが、誰一人として拒む者はいなかった。
満場一致で受け入れOKであることを政府に伝えれば、そう日数を置くことなく彼がやってきた。
この本丸第一にして、唯一の太刀。
一期一振、そのひとである。