第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
私は短刀しか鍛刀できない。
審神者になってはや三年だが、いまだかつて一度も短刀以外を鍛刀できたことがなかった。なおダジャレではない。
審神者になる前に霊力の検査をするのだが、どうやら体質的に、有している霊力の性質的に、短刀以外鍛刀できないらしかった。
短刀以外のドロップ刀剣の顕現も、具合が悪くなったり全然うまくいかなかったり。
まぁつまり全然顕現できなかった。
というわけで。
だいたいの審神者が、打刀の初期刀を迎え入れるところ、私は鍛刀することになった。
政府の担当官によれば、私のような例外はわりといるらしい。
ただし検査結果から推定するに、短刀以外にも手入れや連結など、使役自体はできるようだった。
だがまず顕現ができないのであんまり意味がない。
審神者になってしばらくは、脇差や打刀、太刀といったほかの刀剣を、政府を頼って入手することも考えた。
こんのすけからも強く勧められた。
だが、結局政府は頼らなかった。
修行から帰ってきた短刀たちが強すぎて、全然間に合ったからだ。
日々の任務も十二分にこなせており、いい評定も獲得できている。
ボーナスもおいしく、この前はかなり高品質でお高いプロジェクターを購入できた。
無論、短刀たちを撮った動画の観賞のためである。
その前のボーナスでは、ピザを本気で焼き上げる家庭用窯を買った。
みんなで作ったピザを食べながらの観賞。最高か?
肝心の短刀たちに何度か「短刀以外もいた方がいいよね? 会いたい人いるよね?」と聞いてみたが、
「いつかは会いたいけど、別に今すぐじゃないよ」と小夜。
「いまのたんとうだけのほんまるもおもしろいです!」と今剣。
「俺は主さんとだったらどんな祭りだっていいんだぜ!」と愛染。
「主さんが構う人が増えちゃうよね、そうするとボクが独占する時間がへっちゃう!」と乱。
「主君の霊力の性質からして、他の刀種は負担が大きいのではないでしょうか……私は主君のお身体が第一です」と初鍛刀大正義前田。
はい天使。全員天使。