第3章 ネガティブすぎる審神者
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あれだけ威勢よく叫んだはいいものの、結局勝負は“敗北”という形で終わった。
審神者の顔の真っ青加減と言ったらなかった。
顔面蒼白で無言のまま、一心不乱に手入れをしていた。
出会ってから一番動きが俊敏だった気がする。
奇妙ともいえる挙動に、今までとは違う面から「この審神者大丈夫か?」と思ったほどだ。
おそらく、キャパシティーオーバーで思考回路がショートしたのだろう。
と、こんのすけが言っていた。しばらくしたら元に戻るらしい。
その証拠(?)に、審神者は今再び最初の姿勢をとっている。
「申し訳ありませんでした」
土下座である。
もはや土下座姿を見ている時間の方が長い気がする。
「いや、だからあんたのせいじゃないんだろ」
「そうですよ主様! 手入れまでのチュートリアルですから敗北前提なのです!」
「顕現していただいたばかりにも関わらずあのような傷を負わせてしまうなど審神者失格です」
清々しいほどに話を聞かない審神者である。
微動だにせず土下座を続けている。
顔を上げろとこんのすけと一緒になって散々審神者の肩を揺さぶっていると(主にこんのすけが)、やっと審神者は顔を上げた。
そして俺を見るなり、眉を歪めて頭を抱える。
「こんな綺麗な神様に私は……私はなんという……っ!」
「ああぁ! 現世に戻ろうとしない!」
「なっ!? お、おい!」
こんのすけが審神者の端末操作を止める。
ナイスだこんのすけ。こんなところで俺たちを放置するな。
大きなため息をつきたい気持ちになる。
顕現された当初は、こんなことになるとは思ってもみなかった。
もう一度研修を受けさせてください!
とこんのすけに懇願する審神者を横目に、俺はついにため息をついたのだった。