第3章 ネガティブすぎる審神者
こんのすけと俺の声が重なった。
一歩踏み出して審神者に手をのばす動作まで、奇跡的なシンクロだった。
このタイミングでこの経緯で出直し、なんてできるわけがない。
どんな顔して別の審神者に顕現されろというのか。
この審神者につくとしても、どんな顔して“力を上げる期間”を待っていればいいのか。
この様子じゃそれは一体“何年”になるのか。
「それ何回目ですか! やっとどの刀剣男士か選ぶところまできたのに!」
(何回目かなのか……何回目なんだ……)
すでに何度かあったやりとりで、今回は何回目なのかちょっと気になってしまった。
その熟慮も熟慮の末に選ばれたのが自分であることに気づき、胸の奥から得体の知れないなにかが込み上げてくる。
口元が弛緩しそうで、思わずきゅっと口角を締めた。
なんだこれは。俺は、嬉しいのか……。
「はい! ひとまず出陣です!」
「ヒッ!?」
ピシャリとしたこんのすけの声が上がる。
〆られる家畜の断末魔のごとき悲鳴は、もちろん審神者のものだ。
視界が様変わりしていく。
なにもない空間がグニャグニャと絶え間なく変形し、景色がそれぞれの境界をなくしていた。
脳髄をぐらんと揺らされ、宙に浮かぶ感覚が足を絡めとる。
気づけば俺は、果てのない荒野に降り立っていた。
青くどこまでも遠い空に見下ろされ、風が頬をすり抜けていく。
戦場だ。