第9章 優しさの中に芽生える嫉妬心
さらに力を込められ、苦しくなり身動ぐ
『…お願い、します。離して下さい…』
「俺ではダメなのか?これ程、君だけを想っているのだが?」
『炎柱様がダメなのでは、ありません。私が炭治郎君が、いいんです』
静かだがはっきり言い切る様子に
「…口惜しいな、君みたいな素晴らしい女性は他にいないからな」
変わらず、抱き締めたままなので怪我人だけど本気で外しにいこうとした
まさにその時
「みずきさんから、手を離して下さい。…いくら煉獄さんでも、これ以上は許しませんよ?」
いつの間にか、音もなくそこにいた炭治郎が煉獄の手首を握り締める
「…竈門少年に許してもらう必要はないが、これ以上は神凪に迷惑か」
ふっと力が抜け、バッと抜け出すみずき
その瞳には涙が溜まっていた
「任務明け、煉獄さんが蝶屋敷に運ばれたと聞いてお見舞いに来たんですが……煉獄さんがみずきさんを好きなのは、知らなかったです」
「…竈門少年より、ずっと前から神凪だけを想っている。だが、あまり女々しい真似をするのは俺らしくもない。ここは潔く引こう!」
だがな、と続ける
「神凪が竈門少年に見切りをつけたら、俺の元に来るといい!すぐに嫁に迎えよう!」
と大声で豪快に言い放つ
煉獄さん、反省してないのかな?と炭治郎が静かに怒り、考えていると
『…とにかく、安静にして下さい!失礼いたします!』
勢いよく出ていったみずきを追おうとした炭治郎だが
「煉獄さん、お見舞いは本当ですから。どうか、お大事に…」
そう言い残し、炭治郎もその場を後にした
「…些か、大人げなかっただろうか?」
そこで漸く、反省する煉獄だったが誰もいない病室に独り言が響くに留まった…
みずきは泣きながら、台所に逃げ込み無心になろうとおにぎりの準備をしていた
炭治郎君に見られた!
1番、見られたく…なかったのに
何も言わずに飛び出しちゃったから…傷つけちゃったかな?
……嫌われ、ちゃったかな
そこで引いていた涙が振り返すが片手で乱暴に拭い思考を振り払うように、おにぎりを握り始める
『…炭治郎君、お腹減ってるよね?早く、作らなきゃ…』
一人、呟くと