第8章 記憶を取り戻した彼が望むのは ~曼珠沙華~
色気のある視線を投げられ、たまらず
『…し、失礼しますっ…』
逃げるように帰ってしまった
「…みずき、何してくれるかな?楽しみだな~」
その日、終始、上機嫌な無一郎に周りが少し引くほどだったとか…
次の日、直ってきた隊服に袖を通し準備していると
『師匠、お迎えに上がりました』
他の誰かがいる場合、みずきは必ず僕を師匠と呼んで敬語を崩さない
「うん、ご苦労様。時間、丁度良かったよ」
「みずきさん、おはようございます。これを預けておきますね」
薬が入った袋をアオイちゃんが渡してきた
「食後に必ず飲ませて下さい。…苦いので、皆さん飲みたがりませんがよろしくお願いします」
念を押されたので無一郎の顔を見ると
やっぱり嫌なようでそっぽを向いていた
『分かりました、必ず飲ませます』
その言葉にピクリと反応する無一郎を無視し
『師匠、甘露寺さんは既に屋敷にお戻りのようですれ違いになりましたが、炭治郎君はまだ意識が戻らないようですが顔を見ていかれますか?』
「うーん、意識ないのに行っても意味ないからいいや。…多分、あと数日で意識戻ると思うし大丈夫だよ」
『そうですか、分かりました。では、胡蝶さんにご挨拶に行きましょう』
「うん、診察室かな?」
『はい、先程お会いした時に確かに聞きました』
「じゃあ、行こうか」
『はい』
病室を出て、診察室に向かう最中
「…ねぇ、他の人いても恋仲なんだから敬語使わなくていいじゃん。他人行儀で嫌なんだけど?」
至極、嫌そうに顔を顰める無一郎に
『…ダメ、隊士だからケジメはしっかりしないと』
「……柱命令」
『それは…ずるくない?』
「だって、直してくれないから。もう決めたから、命令聞かなかったらどうなるか…分かるよね?」
『…うぅ、無一郎の意地悪~』
「…優しく言ってるうちに直さないからだよ」
ペロッと可愛く舌を出す無一郎
「ほら、着いたよ?敬語は無しの命令、忘れないでね」
言ってるうちにノックすると
「どうぞ~」
しのぶの返事を聞き、扉を開くと
薬の調合が終わって
「丁度今、区切りが良かったので助かります~」
とニコニコするしのぶ
「今から屋敷に戻ります。お世話になりました」
「思ったより回復が早くて本当に良かったです~」