第8章 記憶を取り戻した彼が望むのは ~曼珠沙華~
ここは蝶屋敷だと理性が止めるのに
会いたかった、今すぐ愛し合いたいという衝動に負け
深い口付けをしてみずきの唇を貪る
たまらず媚声を漏らすみずきに
無一郎は気を善くする
「…ん…すっかり蕩けた顔してる、やらしいね?…ここ、どこか忘れちゃった?」
一気に正気に戻り、ベッドから飛び起きるみずき
「…あれ、もう終わり?全然、足りないんだけど」
『……~っ!続きは治ってから!』
胡蝶さん、呼んでくるからとみずきが出ていってしまった
可愛いな、早く可愛がりたい
…しっかり治そう
と無一郎が考えてると
「失礼しますね、時透君」
若干、急ぎ足で近寄るしのぶ
それから、念入りに診察された後
「…上弦と戦って、この程度で生きて勝つとは流石ですね」
…一応、軽く死にかけたんだけどなと、思いながらも何も言わない無一郎
「これなら数日で回復しますね、本当に良かったです」
ニッコリと笑うしのぶ
「ありがとうございます、胡蝶さん」
「おや、時透君…何かありましたか?」
みずきもすぐ気付いたけど、そんなに変わったかな?
「今回の戦いの最中、記憶が戻りました」
「……!まぁ、そうでしたか!それは良かったですね~」
ニコニコしているが何故か少し怒ってるような表情のしのぶに無一郎が気付く
「…それで私を呼ぶ前にみずきさんにちょっかいを出すような変化が起こった訳ですね~」
あ、バレてる
無一郎は黙って視線を明後日の方へやる
「正直、驚きましたよ~?時透君は決まりや任務、報告が最優先でふざけた事は絶対しないと思っていたので~」
うっすら青筋をたてるしのぶに冷や汗が出る無一郎
…正直、上弦の鬼より今の胡蝶さんの方が怖い
「…まぁ、仮に死にかけて目覚めた時に、恋人が目の前にいたら…たまらない気持ちになるのは分からなくもないですが」
そこでまたニコッとするしのぶ、目は笑っていない
「…次はちゃんと真っ先に報告、お願いしますね~」
「…はい」
さてと、しのぶが言うと
「…つい、今しがた甘露寺さんも起きましたので様子を見てきますね~」
あ、くれぐれも絶対安静ですからね?としっかり釘を指してしのぶが病室を後にした
そこで戦いの中で食らった毒の影響か、高熱が出て意識を手放した