第8章 記憶を取り戻した彼が望むのは ~曼珠沙華~
目を開けると天井
横に温もりを感じ、見やると
涙の跡を残したまま眠るみずき
あぁ、上弦のあのキモい鬼の頸、斬ったとこまではしっかり覚えてるな
あとは毒で朦朧としてたから、あんまり覚えてないけど…炭治郎、大丈夫かな?
ここは…蝶屋敷か
どのくらい寝た?みずきに心配かけちゃったかな?
…不思議だな
記憶が戻った以外は何も変わらないのにみずきが今までより、愛おしく見える…
思わず、顔に手を伸ばすと
『…?!…っ…無一郎!』
目を見開いた後、それに涙を溜めて僕にすがり付くみずき
「…心配かけてごめんね。僕は大丈夫だよ。」
とても穏やかで柔らかな表情の無一郎に
『…無一郎…何か、変わった…?』
すぐ変化に気付くみずき
「うん、よく分かったね。凄い、みずき。今回の戦いで記憶が戻ったんだ…」
『…!本当…に?上弦と戦ったのが何かの刺激になった…?』
「…アレのおかげとか、本当ご免だから。…炭治郎のおかげかな?」
『…そっか、良かったね!それに、無一郎が無事に戻ってきてくれて本当に…良かった』
あ、胡蝶さん呼ばなきゃ!と顔を背け立ち上がるみずきの袖を掴む無一郎
『…無一郎?』
「まだ二人きりがいいな。もう少しだけ…ね?」
小首を傾げながら上目遣いする無一郎に胸がきゅっと締め付けられ動けなくなると
さらに力を加えられ、無一郎に倒れ込んでしまう
『…きゃ、…無一郎、まだ意識戻ったばかりなんだから』
無理しちゃダメって抗議は無一郎の口の中へ消えていく
口の端から代わりに漏れるのは甘い吐息
『……っ、ん、んっ…ふ…ん』
「…ん、はぁ…会いたかった…みずき」
抱え込むようにされ、甘い色気を出す無一郎に
『…私だって、ずっと…会いたかったもん…』
我慢の限界を迎え、大粒の涙を溢しながら
返すように上からチュッと口付けするみずき
「…寂しかった?」
『寂しいじゃ…足りないっ…不安だった!早く、起きてって…ずっと…思ってた』
「僕も、記憶が戻ってからずっと、みずきの事考えてたよ」
優しく髪を梳いて撫でられ、今までと明らかに変わった無一郎に心臓が壊れてしまいそう
今まで足りなかった分を取り戻すように
甘やかすような口付けを施される