第7章 無口な彼の譲れぬ主張 ~深い愛に溺れて~
『…その時の私の刀捌きを見て、人生が変わったと言われたからです』
煉獄がピクリと反応する
「…よく話が見えないが重要そうであるな」
『…義勇さんが後に編み出した拾壱ノ型《凪》は私の当時の刀捌きを再現したと……告げられました』
煉獄が目を見開く
『そんなに強く想われていたと知って、胸を鷲掴みにされました。こんなに自分を想ってくれる素敵な殿方は他にいないと…』
そう告げるみずきの美しさに見惚れた
そうか、あのどこか見覚えのある流麗な技は神凪の動きを再現したという事か
よもや、よもやだ
自分の名をとった技を編み出される…
なるほど、隊士にとってこれ以上の殺し文句はあるまい
そこまで想われていると知ればひとたまりもない、な
今も目の前にいるのは俺なのにこの美しい表情は冨岡に向けられているとはっきり分かる
煉獄は冨岡と神凪の絆の深さを思い知った
「…かなり不利であるな」
煉獄らしからぬ発言だったが小さく呟いた為
みずきの耳には届かなかった
その時、ちょうど隠が到着したので状況説明や指示をする煉獄
みずきは指示を出す煉獄の治療をつけ加えると
「む、これくらいの傷は全く問題ないが?」
『…ただの傷ではなく、血鬼術を食らったのです。念の為、蝶屋敷で改めて治療を受けて下さい』
「…大丈夫だと、言っているが?」
『恐れながら申し上げますが責任ある立場ならば大事をとり、休むべき所は弁えるべきかと』
柱に対して臆せず物を言うみずきに周りの隠が慌てるが
「ふむ、それも然りか」
納得したように煉獄は頷くと
蝶屋敷には自分で赴く、後は任せたと告げその場を後にした
みずきはその場を引き継ぎ、後処理が終わると帰路についた
ーーー
何だか色々ありすぎて疲労感が…凄い
早く帰りたい、義勇さんの所に
煉獄さんにちゃんと伝わったかな?
こんなに私だけを想ってくれるのは義勇さんだけだって
意思表示はちゃんとした、後ろ暗い所は何もないけど
……私って隙が多いのかな?
前に宇髄さんにも腕に閉じ込められてしまったし
今回も煉獄さんの腕の中へ捕らわれてしまった
気をつけよう…
…今日の事、義勇さんに言った方がいいよね?
下手に言わなくて後から知れた方が…怖い